伝統を守り継承する
(株)大和屋守口漬総本家大口工場
工場長 上村 久夫さん
漬け物は日本古来の保存食。
酒を絞った後の酒粕や野菜を無駄なく使い、新しい味を醸し出す。
「日々是丹精」を心として130年以上たった今も伝統製法を頑なに守り続けている工場が大口町にある。
日本の素晴らしい知恵と食文化を、時代にあった新しいものを取り入れながら、次代に継承していくことを信念としている。
「大口町の伝統野菜かりもり」
「かりもり」は、大口町の伝統野菜として古くから栽培されてきた。
戦後、西尾張地方で繊維業が発展したため、大口町では養蚕が盛んであった。桑の栽培が広く行われていたが、次第に繊維業が縮小したことを受け、桑の代わりにかりもりが作られるようになった。
大口町に工場ができた1963年ごろは80件の農家がかりもりを栽培していたが、現在では13件の農家がこの伝統野菜を守っている。
「日々是丹精」
収穫されたかりもりは、その日のうちに種とワタを取り除き塩漬けする。約2か月塩漬けした後、酒粕漬けを3回繰り返すことにより、塩を抜き、酒粕の風味をしみこませる。
酒粕は数種類をブレンドしており、かりもりの大きさや厚みを手触りで感じて塗る量を変えている。
こうした熟練の技術は継承され、手間や時間を惜しまず、約2年半もの歳月をかけて伝統の味がつくられている。
「伝統を守るために」
かりもりは剪定、収穫にとても手間がかかる上に、夏の暑い時期に収穫期を迎えるため大変な重労働で、次第に生産者が減り、大口町でも後継者不足が問題となっている。
大和屋では、伝統野菜を守るため自社の農園を持ち、栽培技術のマニュアル化に取り組んでいる。かりもりの生産者組合の方と話し合いながら、生産者の意見も取り入れて作業の負担を減らす工夫をし、伝統野菜の継承に努力している。
「伝統を次世代へつなぐ」
大口町の伝統野菜を伝えるために、町内の小学校でかりもりの授業を行っている。
「はじめは、かりもりについての知識を伝えることが重点でしたが、今は食育も考えて、もっと大口町の伝統野菜のおいしさを知ってもらいたいという気持ちです。試食をしてもらい、そのおいしさを伝えていきたいです。」と、講師を務める(株)大和屋守口漬総本家大口工場の鈴木さん。
今後も次世代に伝統をつないでいく。