麦を中心に、地域の方と共に歩む
福玉米粒麦株式会社
代表取締役社長 社本基宏 さん
大口町の南部地域を歩いていると、香ばしくて、どこか懐かしい香りが漂ってくる。
麦を焙煎する香りだ。
大口町南部の五条川沿いに、福玉米粒麦株式会社が経営する麦茶の焙煎工場がある。ここでは、大口町産の六条大麦をはじめとする麦の焙煎を行い、麦茶を製造している。
一台の水車から始まった歴史
明治7年、五条川の水を借りて水車を回し、近所の農家から麦や米の加工を受けたのが同社の事業の始まり。
大正時代に入ると、うどんの製造をはじめ、昭和の初期から戦後には、麦ごはんの製造販売、やがて、世の中が豊かになり、食肉や卵の需要が高まると、麦を原料とする畜産飼料の製造を行うようになった。その後、麦製品の製造技術を活かし、六条大麦を原料とする麦茶の生産を始めた。
こうして世の中の変化に柔軟に対応しながら、「麦」を軸として、地域に寄り添い地域と共に発展してきた。
大口町の特産物「六条大麦」
大麦には、味噌や焼酎などの原料となる二条大麦と、麦茶に適している六条大麦があるが、大口町は愛知県内で生産される六条大麦の主要産地である。
福玉米粒麦(株)では、六条大麦の中でも麦茶用に品種改良した、「カシマゴール」を、麦茶にあった肥料、育て方で栽培した麦を使用し、さらに、温度が異なる2台の遠赤焙煎で、濃くて香り高い麦茶に仕上げている。
子どもたちに伝えたい「わがまちの味」
大口町内3つの小学校では、福玉米粒麦の社員が講師となり、「六条大麦」の栽培、収穫を学び、実際に目の前で焙煎し、作った麦茶を飲んでみるという授業がおこなわれている。
毎日通学する風景の中に六条大麦があるが、今の時代、食べ物や飲み物の原料の姿を見たことがない、または知らないという子どもも多い。
旬や季節の風物詩の感覚は失われ、米と麦の区別がつかないということも珍しくない。
だからこそ、「旬」や「季節感」を学ぶ機会を提供したいと同社は考えている。
誇りに思える風景を次世代へ
大口町は、地域と企業が共に発展してきた町。
福玉米粒麦株式会社は代表的なそのひとつ。
「5月の青麦畑、6月の金色の麦秋、そんな美しい大口町の景色に思いを馳せてほしい。
“これが大口町の景色なんだ。”と、誇りを持ってほしい。」と、社本基宏氏。
これからも、地域の方々と共に、この風景を大切にしていく。