伝統文化100年の継承を目指す

豊田獅子囃子保存会

代表 社本 亘さん(写真中央)

 昭和53年に発足し、令和6年現在46年目の活動となる豊田獅子囃子保存会。現在10代から70代の17名が活動しており、豊田区にある八剱社で新年のお囃子の奉納及び春と秋の大祭でのお囃子の奉納と巡行を行っている。春のお祭りにて開催される伝統芸能発表会(金助桜まつり)や町主催の秋の伝統芸能発表会へも出演している。
 豊田区に伝わるお囃子の曲目は7曲あり、その中で「雨ふり」や「道行き」という曲を演奏することが多いが、今年は「宮入り」という曲が約20年振りに披露された。同様に久々の披露を目指し現在は「山もどり音頭」の練習にも取り組み、常に前進を心掛けている。

「獅子囃子」とは?

 尾張地方では祭礼時に獅子舞を奉納する例が多くみられ、豊田区でも八剱社の春と秋の大祭の日、子どもたちが獅子頭とともに地域を練り歩く。その獅子頭を安置し担いだり引き回したりするための、山車に似たかたちの特製の台車を「獅子屋形」と呼び、獅子舞や獅子屋形の巡行とともに演奏されるお囃子が「獅子囃子」である。
 お囃子は大太鼓(長胴ながどう太鼓)、小太鼓(しめ太鼓)、笛で構成される。豊田獅子囃子保存会では、大太鼓は裁断橋物語をモチーフにした獅子屋形の後方部に、小太鼓は後方のにない棒に設置される。笛は横笛で、熱田の職人の手による篠笛を使用している。



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和やかな練習風景

 獅子囃子の練習は、1年を通して毎月2回行われている。かつては曲の調子を擬音語で記した譜面があるのみで、実践的な演奏方法は先輩の指使いを見て覚えるしかなかったという横笛。現在は社本会長自らが作成した、押さえる音孔を明記した楽譜をもとに練習している。また、以前は個々で先輩の演奏を録音し練習することも多かったが、7曲すべてが収録されたCD音源も準備されるようになった。
 社本会長は「まだまだ発展途上のよちよち歩き」と練習風景を評するが、若手もベテランも和気あいあいとコミュニケーションを取り合い、演奏となると一転してみな真剣になる、理想的な練習の場がつくり上げられていると言えるだろう。



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八剱社の巫女舞

 豊田区で継承されている伝統芸能は獅子囃子だけではない。八剱社の春と秋の祭礼時に披露される巫女舞も代々豊田区の小学生の女の子たちによって受け継がれてきた。
 巫女舞を舞うことができるのは小学校4年生から6年生のうちの希望者で、今年は5年生と6年生の計4人。家族に見守られながら練習を重ね、見事な青空が広がった秋の大祭当日には、多くの住民の注目のなかで舞いを奉納した。かんむりかんざしを幾度も挿しかえ、神楽鈴かぐらすずさかきに、更に扇を鉾鈴ほこすずに持ち替え、厳かかつ優雅に「浦安うらやすの舞」をはじめとする数曲の舞が披露された。



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100年の継承を目指して

 獅子囃子や巫女舞の伝統を途切れさせないためには、参加しやすく、続けやすいことが重要である。この理念のもとに運営された保存会には、近年新たな風が2つ起こった。1つは女性の加入があったこと、もう1つは14歳の男の子が、自身の父親を追いかけ加入したことである。親子参加は現在のメンバーでは2組目。地域の宝である伝統芸能を末永く引き継いでいくために、とても嬉しいことだと社本会長は笑い、これからは彼女・彼らの時代だと言う。
 獅子囃子が楽しまれながら継承されてゆくこと、そして継承された伝統が大口町をよりよく盛り上げていくことが期待されている。