過去の歴史から大口町の未来をひもとく
大口町歴史民俗資料館
学芸員 西松 賢一郎さん
豊橋市教育委員会の埋蔵文化財担当となり、牟呂地区区画整理に係る発掘調査に従事する。
平成21年から大口町に奉職。以来、大口町歴史民俗資料館の学芸員として、大口町を中心に、尾張北部の歴史・文化について研鑽を重ねる。令和3年大口町教育委員会町史編さん室兼務となり、「大口町~現代史編~」の刊行に携わった。
大口町歴史民俗資料館
学芸員の仕事として博物館施設の管理、資料の収集保存、調査研究、普及活動などがある。
ほほえみプラザ3階の歴史民俗資料館では、大口町の古代からの歴史の流れを見ることができる常設展示と、年3~4回企画展が行われ、ほほえみプラザに対面するようにある木造、高床の文化財収蔵庫には町民の皆さんから寄贈された貴重な農具や生活用品などが、細かく整理されて保管されている。
大口町の歴史とは
地元の文化遺産とは、史跡や遺跡、伝承、寺社や石造物などの身の回りにある「古いもの」。住民同士の交流の中で、口伝えで伝わっていくような地域文化だ。
戦国三英傑に仕えた堀尾吉晴の子、金助とその母の「裁断橋物語」、入鹿池の堤防の崩壊により多くの犠牲者を出した「入鹿切れ」、汗をかいて住民に危機を知らせた「長松寺汗かき地蔵」など、大口町にもそんな地域に残る歴史が数多くある。
歴史文化教育事業
「口伝え」による伝承が少なくなっていることによって、地域の歴史が途絶えてしまわないように、保育園と小・中学校へ職員が出向き、郷土の歴史を伝える取り組みとして、平成29年より歴史文化教育事業が始まった。
発達段階に応じてわかりやすく伝えることを心がけている。
「自分の住んでいるまちの歴史を知り、自分の故郷として愛着を持つ。そして家族に話すことで、家族にも郷土愛が伝わると良いと思っています。」と西松学芸員は話す。
知るだけではなく、考える授業へ
「まだ、道半ば。」と西松氏。
子どもたちに授業をするにあたり、歴史をただ知るだけでなく、過去の出来事から未来を考える力を身に着ける機会を増やしたいと考えている。例えば、「入鹿切れ」や「伊勢湾台風」など災害の歴史を学ぶとき、その時代どう立ち向かい、復興していったのか。今、自分たちならばどんなことができるのか。
考えることにより、未来を考える思考力が育ち、大口町のまちづくりにつながっていくことを願っている。